2010年1月18日月曜日

M.Weitzman 1965

Utility Analysis and Group Behavior An Empirical Study, Journal of Political Economy 73(1965), 18-26.

競馬ファンの効用関数をデータから求めた最初の論文です。

1.イントロダクション
現在まで効用関数の実証的な研究は、実験室の中の小さなグループを対象としたものが主だった。この論文では、競馬ファンの集団の投票行動の多量なデータを用いて効用関数を研究する。”競馬における平均的な人”(average man at the racetrack" という概念を導入し、その意思決定のメカニズム、さまざまなリスクの組み合わせに対する無差別曲線、お金の効用曲線を与える。

2.期待効用仮説
根本的な仮定は、おのおのは非常によい近似で自分の効用関数を最大にするように振る舞う。mドルを確率pで得る状況の効用関数をU(p,m)とすると、期待効用仮説とは、U(p,m)=p×u(m)となること。ここで、u(m)はmドルの効用。Friedman&Savage(1948)はお金の効用カーブu(m)は、凸凹していると保険に入る一方で、ギャンブルするといったリスクに対する一見矛盾した行動を説明できると主張。Markowitz(1952)はそれを修正。mがc以上a以下では、カーブは下に凸。それ以上だと上に凸とした。aは変局点で、個人のリスクに対する嗜好性で決まり、cは現在の所得。この研究では、cからaまでの領域の効用関数の評価を行う。

3.データ解析
ニューヨーク、1954-1963の10年間、12000レース以上、110000頭以上のデータ。
合理的な競馬ファンは、リスクに対する態度を考えると、オッズ(リターン)が教えるよりも高い確率で勝つ馬を選択する。ここでは、リターンと実際の勝つ確率の間の関係に着目する。

4. 結果
リターンxの関数としての馬の勝率pを計算した。(x,p)の組は257個。 重みつき最小二乗法でフィット。直角双曲線p=A/xのフィットはかなりよく、決定値R^2は0.9807,A=0.8545(±0.0075)
p=A/x+Blog(1+x)/xはさらによく、決定値R^2は0.9852,A=1.011(±0.0190),B=-0.087(±0.0099)
で、こちらを採用。



5. Avmart氏の定式化
人工的に導入した一様な競馬ファンのことを"Mr. Avmart(Average man at the racetrack"と呼ぶ。多数のMr.Avmartが買う馬券は競馬ファン全体で買う馬券と一致する。競馬ファン全体を擬人化したもの。

6.Avmartの無差別曲線
関係p(x)は、オッズxを5倍すると、現実のAvmartのリターンと確率の無差別曲線になる。なぜなら、1レースに大体5ドルかけるから。p(mドル)=p(x=m/5)はAvmartの等効用曲線。曲線上の任意の2点A(m1,p1),B(m2,p2)の効用は同じ。1/xがp(x)のかなりよい近似であるというのは重要である。Avmartが期待効用仮説を支持していることを示す。

7.Avmartのお金の効用曲線u(m)
Avmartが期待効用仮説に従うならば、彼のお金の効用関数を決定できる。ある定数Kを用いてp(m)×u(m)=Kが成立するので、u(m)=K/p(m)となる。p(m)=5A/m+5Blog(1+m/5)/mを代入する。結果、u''(m)>0 が5≦m≦500で成立し、下に凸であることがわかる。u''の値はm=500ドルでm=5ドルの100分の1以下なので、十分大きなmでu''=0となり、上に凸な領域に変化するのかもしれない。



8. 結論
競馬ファンはMarkowitzが仮定した下に凸な効用関数をもった個人の集団のように振る舞う。