2010年1月21日木曜日

M.M.Ali 1977

Probability and Utility Estimate for racetrack Bettors, Journal of Political Economy 83(1977)803-815.

M.Weitzman(1965)はオッズ(リターン)に対する勝率を解析したのですが、それを人気(オッズの小さいものからの順番)に対して行った。また、F-Lバイアスの原因として、効用関数の凹性の他に、競馬ファンの考える勝率のゆらぎを指摘。また、レース後半で所持金が少なくなると、F-Lバイアスが大きくなる。

データは20247レースの繋駕速歩競走(けいがそくほきょうそう、harness horse race)

1.イントロダクション

心理学の実験で低確率の事象の頻度が過大評価され、高確率の事象の頻度が過小評価されると主張された。Griffith(1949)やMacGlothlin(1956)は競馬のデータから同様な結論を得たが、彼らのデータはわずか1500レース以下。M.Weitzman(1965)は12000レース以上でやり、以前の研究を確認+典型的競馬ファンの効用関数を評価した。

2.主観vs客観確率の評価

単勝を考える。H頭のレースで馬iに賭けられた額Xi、総額Wとする。aが競馬場の取り分と切り捨て分の和とすると、オッズAiはAi=((1-a)W-Xi)/Xi=(1-a)W/Xi-1となる。

馬hが勝つ主観確率は賭けられた額の比率Xi/W、客観確率はレースが無限回行われたときのその馬の勝つ比率。馬iの主観確率ρiはオッズから分かる。ρi=(1-a)/(1+Ai)。馬iの客観確率πiは一回の試行からは分からない。そこで馬をグループわけを行い、その平均主観確率と平均客観確率を比較する。同じグループの馬は、一頭の馬と考える。馬は人気でグループ化する。1番人気、2番人気という風に。人気をhで表し、ρhとπhを比較。人気hは1番から8番まで。すると、h=1ではπhはρhよりも大、h>=5では、逆πhはρhより小さいが成立。1番人気の馬では、主観確率よりも客観確率が上で、人気5以下の不人気馬では逆に主観確率ほど客観確率は高くなく、F-Lバイアスが確認された。

3.F-Lバイアスの説明
(1)心理学的なもの
(2)競馬ファンはリスク選好
競馬ファンは合理的(=損な行動はしない)で馬の勝率を知っていてリスク選好であるとすると、期待効用仮説とも一致。ただし、効用関数は凹。ただし、このアイデアは矛盾する場合がある。効用関数はひとつのレースで馬券を買うときのみ、と限定すれば問題なし。
(3)馬の勝率の知識にバラツキがある+リスク中立+合理的でも説明可能。

4.効用関数(Implied Utility Function)

競馬ファンは期待効用関数を最大化&勝率を知る&ひとつのレースに限定すると仮定((2)の場合)して、レースデータから効用関数を評価する。Implied効用関数と呼ぶ。結果は、リターンの増加とともに増加率が上昇する、リスク選好タイプであることが分かった。



効用関数をu(x)と書く。人気hに対する真の勝率πh、平均オッズah。所持金をXo。
人気hに賭けたときの効用関数の期待値は、
Eh(u)=(1-πh)u(Xo-1)+πh[u((Xo-1)+(1+ah))]
ahは最終オッズなので、どの人気hの期待値も同じになる。
E1(u)=E2(u)=E3(u)=E4(u)=E5(u)E6(u)=E7(u)=E8(u)
Xo-1=0、u(0)=0,u(1+a8)=1と選ぶと、u(1+ah)=π8/πhとなる。リターンx=1+ahとすると、log u(x)=0.2794(0.0200)+1.1784log x(R^2=0.9981)でフィットできる。u(x)=1.91*x^{1.1784}となり、凹な関数となる。