2010年1月7日木曜日

初版序文

競馬市場はギャンブラーやカジュアルな娯楽を求めている人々だけでなく、多肢にわたる分野の研究者にとっても興味を引くテーマである。ギャンブラーや投資家にとって競馬は面白いスポーツであり、利益の追求にも挑戦する。学者たちはこの挑戦に興味がある。彼らのアプローチは競馬市場が効率的なのかどうか、もしそうでないならリスク分を補正しても正のリターンを得ることが可能なのかを明らかにすることである。それに加え、競馬データを解析する手法、こみいった事象が起きる確率の決定、ギャンブラーの振る舞いの説明、賭けの戦略の開発も活発な研究分野である。競馬市場が面白いのは、効率性やギャンブラーの振る舞いの問題を議論する場を与えるだけでなく、簡単にアクセス可能な世界中のデータがこれらの疑問の検証を可能とするからである。
競馬に関する研究は過去40年以上に渡り学術雑誌に発表されてきた。近年、論文数は増加傾向にある。かなりの間、その経済学的、心理学的、財務的、統計的、そして数理的な側面をカバーする書籍が待望されてきた。この論文集は、さまざまな分野の世界中の研究者達との共同作業の結果である。この本は二通りの読者を想定する。競馬に興味のある研究者と競馬の学術的な研究について知りたいと考える一般読者である。
イントロダクションに続いて、7つのセクションが連なる。
(1)心理学的な研究
(2)競馬ファンの効用関数とリスク選好
(3)経済学または数学的な考察
(4)単勝市場の効率性とFavorite-Longshot(F-L)バイアス
(5)複勝馬券市場(placeとshow)の効率性
(6)エキゾチック馬券市場の効率性
(7)英国連邦とアジアの競馬市場の研究
である。